月夜
一度入ってみたかった、夜の遊園地。
半刀のような月の闇に、無人の世界をあそぶ面白さ。
私は両手を後ろに組んで、少し気取って歩いていた。
誰も見ていないのにね、と自嘲気味に呟きながら。
観覧車の影は骨のようで、ジェットコースターに重なり、巨人の死骸を映し出す。
最近できたばかりという高い塔のアトラクションは、神に挑んだバビロンを思わせた。
ああ、そうか。
こんなにも近くに、この世界はあったのだ。
耳が痛くなるほどの静寂の中で、私はいつの間にか笑い出していた。
とても自然に。
シャッターの閉まった売店で切符を買って、暗い水面を漂う小船で漕ぎ出せばいいだけのこと。
月夜の遊園地の裏では、死者の宴が開かれているに違いない。
END
これも昔に書いたものです。 自分の望む雰囲気に仕上がったと、 当時はかなり気に入っていたような ことがノートに書かれていました。 しかしここまでくると、雰囲気重視と 言うよりも、単に話として意味不明の ような気が・・・(笑) |